第1章

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 「絆」  声がかかった方向を、振り返る。  「行こうか」  澄んだアルトの声。  彼は、男性にしては声が高い。  5年間聞き続けた、馴染みある声だ。  わたしに笑顔を向けて言うその人に、わたしも笑顔を返した。  「はーい」  返事をして、歩き出そうとした瞬間。  風が強く吹いて、花びらが流れるのと同じ方向へ、わたしのスカートと髪の毛を揺らした。
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