&【THE MOON Ⅱ】

6/13
前へ
/122ページ
次へ
「クッ、御陵ッ――」 「『おやすみ』藍沢」  ――音も無く  静かに閉まる自動ドア。 (めんどくさ)  夏の匂いを隔離した  涼しい空間に  知らず溜め息が零れた。 「あーあ」  夏樹にからかわれ  場に取り残された  藍沢が立ち尽くしていた。 「ねーねーたける」 「ん~?」 「アノ人だいじょーぶ?」 (誰のせいだか)  首に回された細い『腕』は  今はもう、すっかり落ち着いている。 「明日、俺休むから」 「なに」 「学校」 「たける不良?」 「まさか」  エレベーターを待ちながら。  ほぼ初対面の夏樹との会話に  心地良さを感じている自分を。 (珍しいねぇ)  不思議な気分で  客観視していた。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加