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「クッ、御陵ッ――」
「『おやすみ』藍沢」
――音も無く
静かに閉まる自動ドア。
(めんどくさ)
夏の匂いを隔離した
涼しい空間に
知らず溜め息が零れた。
「あーあ」
夏樹にからかわれ
場に取り残された
藍沢が立ち尽くしていた。
「ねーねーたける」
「ん~?」
「アノ人だいじょーぶ?」
(誰のせいだか)
首に回された細い『腕』は
今はもう、すっかり落ち着いている。
「明日、俺休むから」
「なに」
「学校」
「たける不良?」
「まさか」
エレベーターを待ちながら。
ほぼ初対面の夏樹との会話に
心地良さを感じている自分を。
(珍しいねぇ)
不思議な気分で
客観視していた。
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