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少し早足で向かうと、私の姿を見つけた彼が手招きをしてくれた。
「あんなとこで何してたの?」
微笑みながら彼は言う。
「特に何も…」
「そっか。名前は?」
「戸崎です」
「戸崎…あぁ、隣のクラスの!どうりで見たことあるわけだ」
すいません、私は見たことありません…。
でも近くで見ると惹きつけられる何かがある。
整った顔してるなぁ…。
「戸崎さんさぁ、下の名前何て読むの?委員会で名簿の整理してる時に見たんだけど読めなくて。歌で叶える、ってすごい素敵だよね」
「かな、です」
「なるほど、じゃあ、歌叶って呼ぶね」
「え、呼び捨て?」
「俺のことも呼び捨てでいいから」
「名前知らない…」
「高橋結凛」
「ゆーり…くん?」
「くんはいらないよ」
「…ゆーり」
それでいい、と優しく微笑む結凛にキュンとする自分がいた。
「結凛は、いつもここで何してるの?」
「サッカー部見てんの」
「…部活は?」
「サッカー部」
「やらないの?」
「いろいろあってね」
なんで?と聞こうとしたけど、それ以上は何故か聞けなかった。
「歌叶は、いつもあの教室にいるの?」
「まぁ…」
「俺も行っていい?」
「サッカー部見ないの?」
「君といたいの」
なんて答えればいいのか口ごもっていると、「じゃ、そろそろ帰るね」と結凛は帰ってしまった。
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