フリージングレイン 7

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これから年老いて死んでゆく前に、 もう一度 触れてみたい 若い日の未練が、 ほんの少しだけ 私を女にもどす。 忘れかけた熱情と よこしまな心が交錯する。 やさしい手、 石鹸の匂いのワイシャツ、 肩を抱き寄せた あたたかな腕。 何年ぶりかで触れた、 愛と言う言葉。 あたかも自分が、 きれいな女の人のように 感じさせてくれる ハンスさんの言葉。 そこへ、家に電話をしていたのか、 ハンスさんが戻ってきた。 「行きましょう」 「え?」 「部屋が取れました」 フロントに行っていた? 「家に電話をしていたのでは?」 部屋の鍵を持っていた。 催眠にかかったように、 誘導されてホテルの 部屋の前まできた。 なにをしてるの、私。
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