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6.未練
ハンスさんと出会い、
一緒に歩いた雑踏や刺激。
心地よい興奮だって、
生きていく上に必要だけど。
わがままでもいい。
うらぎりでもいい。
ハンスさんが今ここで、
私を必要とし求めてくれるのなら、
錯乱の町に堕ちてみようか。
そうしてそれが、
穏やかに本当の自分に
戻れる刹那だったとしたら?
いやいや、
自信をもって誇れる私の家族、
築きあげた家庭、
幸せだった人生を、
今なら抑えることができる
よこしまな心に、
邪魔をされては困るのだ。
「この頃、一人でよく、
あのイタリアンレストランへ
行っています。
一人残される自分への訓練。
あなたの飛行機が
ケネディを発つ日、
私は何をしていたらいい?」
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