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ハンスさんに続いてキャブから降りた。
キャブには、少しの時間、
待っていてもらうように、
ハンスさんは運転手さんにチップを渡していた。
「あと少しだけ、
歩きませんか?」
キャブをそのままに、
最後の、
本当に最後の時を
いとおしみながら、
名残惜しさでいっぱいで、
私たちは寄り添って歩いた。
突然、
ハンスさんは立ち止まり、
強く私を抱きしめた。
今までにない激しさで、
狂おしいほどの長いキス。
体が壊れてしまいそう。
息ができないくらい苦しくて。
私、自分の足で立っていられない。
ハンスさんに支えられてかろうじて。
それからそっと私を離し、
両肩においた手を
そっと離してくれた。
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