フリージングレイン 7

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こんな路上の混雑を、 超高層のビル群は、 両翼を広げ無言で包み込んでいる。 アンバランスな調和。 大きな「静」と、 こまごました地上の「動」が融合し、 かもし出す不思議な空間。 限りある生命の活動の全てを、 無言で見守る大宇宙の 何者かの気配。 ミッドタウンの駐車場にハンスさんの車を止め、 イエローキャブに乗り換えて、 私たちはダウンタウンへ向かった。 日常とは違う物憂げな刺激を いとおしみながら、 昔の若者たちは そっと腕をからませた。 ビレッジの静かな通りを 歩きながら しゃべり続ながら、 やがてくる別れの時を あえて意識から遠ざけた。 ここがどこなのか、 自分が何者なのか、 今の私は無国籍。
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