第7章 空蝉の人

49/49
前へ
/214ページ
次へ
 すると、女はますます身を丸くし、夜具代わりに身にかけていた単を頭から引きかぶり、 「どうぞ、このままお帰りください。どうぞ、わたくしの事はこのままお捨て置き下さい…」  と、くぐもった声で告げた。なんという強情さであろうか!  過去に戯れに関係を持った高貴の姫君達ですら、どんなに高慢な態度をとろうとも一夜を共にすれば、自然に心をほどき、打ち解けたものだというのに…。  たかが、受領の後妻が、まるで私を何か汚らわしい物のように扱うとは…。そう一堂思い込むと、激しい怒りが込み上げて来て、私は獣の如く、女にのしかかった。 「何をなさいます!」
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加