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紀伊の守の、伊予の介の後妻に対する嫌悪感をあからさまにするこの感じは、裏を返せば後妻への好意を周囲に悟られまいとする為とも思える。
私は核心をつこうと、紀伊の守に言う。
「それはそうだろうが、かといって今更、その後妻をあなたのような年若い男に譲るという訳にもいかないだろうよ。年はくっていても、伊予の介は風流人だという噂だし後妻も満足しているからこそ不満や泣き言一つ言わないのだろう…そう考えると、年の問題は関係ないのかもね」
「……さようでございましょうか」
紀伊の守は黙りこくり、私は微笑を浮かべつつ、残り僅かとなった酒を啜る。
やはり、この紀伊の守、義母に想いを寄せているな、と確信しながら。
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