第7章 空蝉の人

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 しばらく私は息を潜めて、辺りが完全に寝静まるのを待った。  仄かに灯されていた燈籠が消え、完全な闇に包まれる。眠りの気配が漂い始め、それを合図に私は狩人の如く、動き出す。  まず、襖の掛け金をそっと引き上げる。向こう側からは掛け金がかけられていなかったらしく、簡単に板戸は開いた。  なんとも不用心な事だ。だが、今の私には好都合だ。
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