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「明け方、迎えに参れ」
そう告げて、私は胸に抱いた女をひょいと抱き上げ、奥の寝所に向かい襖を閉めた。
夜具の上に女を横たえ、私は彼女に覆い被さる。女は震えながら最後の抵抗のように、着物の胸元を必死に手で押さえ、うつ伏せになった。
そんな事をした所で、無駄なだけだ。
むしろ、男の欲情を煽るだけだと気付かないのか?
クスッと笑みを洩らし、私は女の髪を撫でる。
「何もそう驚く事はございません。私は決して出来心でこのような真似をしている訳ではない。…心から貴女をお慕いしているからこそ…こうして危ない橋を渡ってまで、貴女に想いを打ち明けたのですよ。これは前世からの縁なのです。愛しい人」
女は答えない。私は指先をゆっくりと這わせる。髪から、耳へ…。耳をなぞり、頬へ…。そして、そっと唇に触れる。
びくり、と女の体が震えた。
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