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女は恥ずかしさからか、情けなさからなのか、びっしょりと汗をかき、今にも泣き出しそうな声で言った。
「このような事は現(うつつ)とも思えませぬ。わたくしなどは数ならぬ身ではございましても、これ程、情けない辱しめを受けて、どうして貴方を信じる事が出来ましょうか…。どうか、わたくしを真に愛しいとお思いならば、このままお捨て置き下さいませ」
「愛しいと想うからこそ…なのですよ」
私は女の首筋をすーっと撫で上げる。
「愛しいと想うからこそ…こうして想いを遂げたいという気持ちばかりが先だってしまう程、私はまだ何も知らない年頃なのです。どうか、この世によくいる浮気な男達と同じにはお思いくださいますな。…私から貴女に無体な事など出来る訳がない。…むしろ、貴女に嫌われたという悲しみでこのまま消え去ってしまいそうなくらいだというのに」
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