第2章 命の光

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 父帝の男としての愚かさを如実に表している話がある。    ある、嵐の夜、母・桐壺の更衣はその夜も帝に召され、他の妃達の局の前を、丈なす黒髪を滑らせて静かに行き過ぎようとしていた。    だが、弘機殿の女御の局の前を通り過ぎようとした時、突然、帝のおわす清涼殿へ続く廊下の切り戸が、閉められてしまったのだ。 「どなたかおられませぬか!?どうかここをお開けくださいませ!!」  桐壺の更衣の女房達が必死で、切り戸を叩き叫ぶ。  身重の母は、滝のような雨に打たれながら、次第に凍え行く体を震わせた。
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