第2章 命の光

13/34

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「桐壺のお方様…。このままでは御体に触ります。どうか今宵は諦めて、局に戻りましょう」  女房達の言葉に、桐壺はうなずいた。 「このように濡れた体で、帝の元へ上がるなど、失礼になりますものね…。それに、酷く寒いのです…。今宵ばかりは…」 「桐壺様…」  諦めて、桐壺一行が踵を返そうとしたその時だった。  ガシャリと音を立てて、反対側の切り戸までが閉められてしまった。  桐壺の更衣と、その女房達は閉じ込められ、戻る事も進む事も出来ない状態に追い込まれたのだ。 「なんという…なんと…」  あまりの仕打ちに、怒りで身を震わせながら、桐壺の更衣の乳母子(めのとご※乳兄弟)である小少将の君はあらん限りに叫ぶ。 「あんまりにございます!!弘機殿の女御様!!この仕打ちが帝のお耳に入ればどうなるか分かっていていらっしゃるのですか!?」 「止めなさい…小少将…」  制する桐壺は、雨に体温を奪われ、顔を青くし、今にも倒れそうであった。小少将は、首を横に振る。 「やめませぬ!桐壺様が何をしたというのですか。弘機殿の女御様!!早く開けて下され!万が一、桐壺の更衣様のお腹の御子に何かあれば、帝の御子を殺めようとしたと同罪!いくら右大臣家の姫君の貴女様であろうと、罰からは逃れられませんぞ!」  
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加