第2章 命の光

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 小少将の君から事の経緯(いきさつ)を全て聞いた帝は激怒され、一層、弘機殿の女御を疎ましい者となさり、それまで月に一度は、情けから弘機殿の女御を召しておられたのだが、それすらも止めてしまわれた。    流石に、政治の権力者である右大臣の娘を、表だって罰するような事はなかったが、帝は、弘機殿を徹底的に無視する事によって、制裁とした。  最愛の女人と腹の中の御子の命の危機に、帝は狼狽(うろた)え、ある決断をされる。  人は狼狽えた時、正常な判断力を欠くものだが、父帝の決断はあまりに幼稚で、周囲の反感を買う物でしかなかった。  父帝が、自身にも、桐壺の更衣にもよかれと思って成した決断が、結果、桐壺の更衣の評判を回復不可能なまでに地に落とす事となるのである。
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