第2章 命の光

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「今後、後涼殿(こうりょうでん)は桐壺の更衣の局とする」  帝が下されたその命は、後宮のみならず臣下達をも騒然とさせた。  後涼殿とは、弘機殿(ここでは局の意)の次に、清涼殿に近く、また、女御格の妃しか居住を許されない局であった。そこを更衣でしかない桐壺に与えるというのは、前代未聞である。  しかも、後涼殿には既に居を構える妃がいたのだ。その妃を別の局に移してまで、桐壺の更衣を後涼殿に、という帝の命に、人々は目を剥いて驚いた。  一番、驚愕したのは、後涼殿に住まっていた妃、その人である。まさか帝が自分を追い出し、桐壺の更衣を後涼殿に住まわせようとしているなど、寝耳に水であった。  それまで後涼殿の妃は、弘機殿の女御や、他の妃とは違い、桐壺の更衣に対しては同情的な気持ちを抱いていた。  しかし、このような仕打ちに合い、桐壺の更衣への同情的な気持ちは憎しみへと転じたのだった。  
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