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母の状態は一進一退を繰り返していた。
政務の時間以外、付ききりで看病する帝は、加持祈祷の僧を増員し、昼夜なく、母・桐壺の更衣の病気平癒と安産を祈願した。
後涼殿への移住は桐壺の容態が回復を見せないために、一時的に延期されたが、帝の度を越しているとも言える桐壺への執着は、後宮の非難の的となった。
ある女御は、陰陽師へ内密に桐壺への呪詛を行わせ、また、ある更衣は夜な夜な宮中を抜け出し、山奥で自ら、人形を五寸釘で滅多刺しにし、怨念の言葉を吐いた。
どんなに霊力の強い高僧の祈祷をもってしても、桐壺の容態が回復しないのは、後宮に渦巻く女達の怨念が、桐壺の更衣にまとわりついて離れなかったからである。
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