57人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「お願いです…。どうか御子を無事に生む為に、里に下がるのをお許し下さい…」
息も絶え絶えに、母・桐壺の更衣は、帝に訴えた。彼女の初めての帝への懇願であった。帝は、桐壺と離れがたく、離れてしまってもし万が一の事があれば…と恐怖にかられて、なかなか首を縦には振らなかった。
しかし、医師の見立てもあり、数日後、桐壺の更衣は、宮中を退出する。この時、私の母である桐壺の更衣は、内心ほっとしていたに違いない。
いや、母は、間違いなくほっとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!