第2章 命の光

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 今だからこそ、話すが、私には胎児であった頃の記憶が僅かばかり残っている。  母や後宮での出来事については、おおよそ父帝や、母に仕えていた左近の君、小少将の君、母方の祖母から聞かされた話がほとんどではあるが、私は、母自身の気持ちは誰から聞かされずとも、よくわかっていた。  母は、父帝への強い愛の力であらゆる辱しめに耐えてきたが、体力のみならず精神力にも限界が来ていた。  実家に帰る事で、つかの間ではあるが、誰の目も気にせず過ごせる事に母は、帝には申し訳なく思う傍ら大変安堵していた。それに、腹の中の私の為にも、実家で産んだ方があらゆる危険から避けられると思っていた事も、私は知っている。  
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