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実家に帰省した母は、少しずつだが確実に回復していった。
御子の為にも、早く良くならなければ。御子を無事に生んで差し上げる為にも、元気にならなくては。
その一心が、母を支えていた。
世間に公には語られていないが、私がこの世に生を受けたのは、桜が激しく舞い散る早朝。まだ沈みきれぬ月と、昇り始めた太陽が同時に空に輝く時分であったという。
「なんて美しい!まるで玉のような男皇子でいらっしゃる」
「男皇子…わたくしと、帝の…」
母・桐壺は、涙を流しながら微笑み、まだ産まれたばかりの私を愛しそうに、優しく、そっと、その胸に抱いた。
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