57人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
三歳の私は、確かにこの時、幸せだった。両親の愛を一身に受け、優しい人々に囲まれて…このまま、春の光のように暖かな幸せが続くと思っていた。
だが、幸福は突然終わりを告げた。何の前触れもなく。
その年の夏の終わりに、母は再び病を得て、父帝に里下がりを申し出たのだ。私が生まれて三年、時々体調を崩す事はあっても、すぐに持ち直していた母だけに、帝も
「また、いつもの軽い体調不良であろう。もう少し宮中で様子を見なさい」
と、里下がりの件を真面目に取り合おうとはしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!