第2章 命の光

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 だが、母には何か予感めいたものがあったのだろう。  いつになく熱心に何度も何度も、帝に里下がりを申し出た。それでも 「夏の暑さに心弱くおなりになられているだけだ。もう少し様子を見てから」  帝は、そう仰せになるばかりだった。  母は、やがて食事を受け付けなくなり、みるみるうちにやつれて行った。たったの一ヶ月あまりの間にだ。さすがに、これには帝も驚き戦いて、私の祖母で桐壺の更衣の母にあたる人からの書状での訴えもあり、ようやく里下がりをお許しになられた。
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