第2章 命の光

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 私は何も知らされぬまま、一人、宮中に取り残された。  宮中を去り際に、母が私を見つめ、流した涙には口にこそ出さなかったが、これが永久の別離になるかもしれないという深い悲しみがあった。  幾ら並外れて利発と言われた私でも、三歳で、母の心の細かい襞までを察する事は出来ず、ただ、その時は母が私を置いて、何処かに行ってしまうという事だけを理解した。
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