57人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
母の死までを語り終え、私と紫の上の間には重い沈黙が流れた。
私はどっと疲れて、その場の重い空気を払うかのように、明るい声で、紫の上に告げる。
「もう夜も遅い。今日はここまでにして、続きはまた明日にしよう」
『はい』
紫の上は頷き、私は彼女の肩を抱いて寝所へと向かう。
彼女の横顔を見つめながら、私は思い出していた。彼女に瓜二つの、あの方の事を…。
私の視線に気付いた紫の上が訝しげに首を傾げる。
『殿…?わたくしの顔に何かついておりますか?』
私は首を横に振り、愛しい妻に微笑んだ。
「明日は、藤壺の宮様の話をしよう」
そう。紫の上にそっくりな、私の初恋にして、永遠の人の話を…。
最初のコメントを投稿しよう!