第3章 藤壺

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「今日は、藤壺様の話を聞かせましょう。貴女には叔母に当たるお方だ」  私は紫の上を胸に抱き、体をゆらゆらと揺らした。まるで、揺りかごのように。揺れているのは私の方なのに、なぜだかこうするとひどく安らかな気持ちになった。  妻は私に身を預け、微笑む。 『お聞かせくださいませ。殿のお話ならどんな事でも、聞きとうございます』  私の母・桐壺の更衣が亡くなり、父帝は絶望の淵をさまよわれていた。そんな父帝の思いを私は知らずにいた。無理もない。私は母の葬儀後、母方の祖母の屋敷に一時的に引き取られ、生活していたのだった。
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