第3章 藤壺

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「亡き夫・大納言の生前の願いを叶えて差し上げたく、また、姫があまりにも類い稀な器量を備えていらっしゃったが故に、帝に入内させましたが、このような事になるならば、入内などさせず、数多(あまた)いた求婚者の中から適当な相手と結婚させるべきでした…」    祖母は悲しみと悔しさで毎日、涙を流しながら、時折、私の頭を撫でた。 「このようにあどけない若宮様を、あの恐ろしい場所になど…絶対にやれない。帝はおろか、誰も信用など出来ない…」    老いて皺だらけになった手が私の髪を撫でる度、私は幼心がざらつくのを感じた。あの時、私が感じていたのは不快感だったのかもしれない。  祖母の私に対する異様な執着と、帝に対する怨みにまみれた言葉の毒を浴びせられた不快感…。
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