第1章 母

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「桐壺の更衣など、消えてしまえばよいのに!!」    後宮のそこかしこに母の死を願っている妃達がいた。その、筆頭だったのが、右大臣の長女で一番位高い、弘機殿(こきでん)の女御であった。  この、弘機殿の女御からは、後々、私も酷く苦しめられる事になるのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。  弘機殿の女御は、身分の高さを鼻にかけ、大変、矜持(プライド)も高く、嫉妬深い、負けず嫌いの女人だった。  それに、母・桐壺の更衣が後宮に上がる前までは、後宮一の美姫として、帝に寵愛されていたという。  そういった経緯もあり、身分も後ろ楯もない、ただ「絶世の美女」でしかない、桐壺の更衣が、自分から帝の寵愛を奪った事が許せなかったのだろう。
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