57人が本棚に入れています
本棚に追加
私は祖母のそのあまりにも異様な泣き顔に恐怖し、身動ぎも出来ず、言葉さえ失い、立ち尽くした。
「いやじゃ…いやじゃ…いやじゃ…いやじゃ…あってはならぬ。あってはならぬ。…あぁあああ」
乱心した祖母は、髪を振り乱し、叫んだ。騒ぎを聞き付けた女房達が慌てて駆け付け、祖母の身を取り押さえる。
「いかがなさいました!?北の方様(※屋敷の女主人。または屋敷の主の妻の意)!しっかりなさいませ」
私は呆然とその光景を見つめていた。祖母はおかしくなったのだ。頭の中で冷静にそう感じながら。人が絶望するとこうなるのだな、とやけに冷めた感覚で、自らの祖母が狂う様を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!