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まだ幼い私の美しさというのは、大人の『男』のそれとも、女のそれとも違っていた。
人でありながら、人ではないような『美』。まるで、光を放つように輝く私を、宮中ではいつしか『光の君』『光る君』と呼ぶようになった。
私を表す時に使う『光』という言葉は、以後、私が元服し、源氏姓を賜ってからも使われる事となる。
父帝は、母のない私を溺愛し、何処へでも私を伴って出掛けた。無論、後宮の妃達の局にも。
「母親を亡くし、頼りなく可哀想な皇子です。どうか、仲良くして差し上げて下さい」
帝は決まり文句のように、妃達にそう告げる。そして、私は帝の後ろから顔を覗かせ、気恥ずかしそうにペコリと頭を下げる。
これに、相好を崩さない妃はいなかった。
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