第3章 藤壺

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 ある日、私は、父帝に仕える命婦の一人に、『竹取物語』の朗読をしてもらっていた。 「かぐや姫は人間とは思えない程の美しさだったそうです。光の君様も、まるで輝くようにお美しいからもしかしたら月の天人かもしれませんわね」  などと言い、命婦はくすくす笑う。私は首を傾げ、 「それにしてもなぜ、かぐや姫は月の天人だというのに、竹などに入ってこの地上に生まれたの?」  と訊ねる。命婦は、困ったような表情のあと、名案が思いついたのかパッと目を輝かせた。 「古来より、草花や水、自然の全ての物には精霊が宿っていると申します。精霊はそれはそれは美しい姿をしているとか…。ですから、かぐや姫は月の天人であり、竹の精だったのでございましょう」  かなり無理矢理な解釈ではあるが、私はふーんと頷いた。
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