第1章 母

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「ご自分が、ねだったのであろう?それを恐れ多くも帝のせいにされるとは…。なんて、浅ましい女。恥をしりなさい!」  カッとすると、口より先に手が出るのが、弘機殿の女御という人である。私の母は、打たれた小さな手を真っ赤にしたまま 「申し訳ございません…」  と頭を垂れた。  だが、母は頭を下げる必要などあったのだろうか?  もし、弘機殿が帝に、「もう少し一緒にいてくれ」と言われたら、断れただろうか?  いや、断れるはずがあるまい。ましてや、母のような気の弱い、身分の低い女人ならば尚更…。
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