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「お前は、どうやってここに来た?」
ドラゴンが尋ねる
俺は…
名前はユト。それは覚えている、が、それ以外に思い出せないのだ
自分の記憶が霧がかかったように、見えないのだ
ドラゴンを見つめると不思議そうにこちらを見つめ返してくる
「もしや…思い出せないのか?」
「いや…どこから来たのか、自分がどういう人間なのかもわからない」
話しながら考える
このドラゴンは自分を攫ったわけではない
ならば、自分はどうやってこの森に来たのか、なぜ倒れていたのか
頭が混乱する。記憶がないことがこんなにも不安になるのか、と、少し他人事のように考える
「そうか…それならばわたしにはどうしようもないのだ」
申し訳なさそうにドラゴンが言い、そうして、また訪ねてくる
「わたしの名はレジスという、お前の名はわかるか?」
「ユト…」
レジス…ドラゴンに名があるのか、と思う
「ではユト、本来なら人間の元へ返さなければならない…」
そこで言葉が詰まる。
何かを考えているようにも見える
「だが、お前は普通は話すことのできない魔物と話しているのだ。例外として魔を束ねる王の元へ連れて行きたいのだが…」
魔王…?
なぜ人間である俺が魔王と会わなければならないのか、そして、なぜこの場で俺を殺さないのかを疑問に思った
「……なぜ、なぜ連れて行くんだ?」
「!…それは、行けばわかることだ」
レジスが言葉を濁した
言わないのか…気になる、それに、人間の元へ帰ったところで帰る場所がどこかもわからない。
それなら魔王とやらのところへ連れて行ってもらった方が良いのかもしれない
「わかった、連れて行ってくれ」
もしかしたらそう答えるしかなかったのかもしれない。
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