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広げた手のひらに数粒を振り出して、私は驚いた。
「──あれ?」
それは、よく見る、ありふれたラムネ菓子だった。
ほとんど球と言っていい形状。色も真っ白だ。あの劇薬やビタミン剤とは、まるで違う。
それに匂いだ。
『度煎留』でテーブルの上のビタミン剤と紙ナプキンごとすり替えたときも、喫茶店で犯行の手順の再現として瓶から振り出したときも、こんな匂いはしなかった。
ただ。
沙緒子がそれを口に放り込んだときにだけ、かすかにこの匂いがしたような気はするけど……。
「──もしかして沙緒子?」
彼女は文庫本に目を落としたまま、にやにやとしていた。
それは、鮮やかな手さばきで目の前の観客を見事に手玉に取った手品師の顔だった。
『まだらの瓶』おわり
★最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
次作をお楽しみに!
★梓の配達したコーヒーを飲んだ
女性が死んだ──。
シリーズ第4弾『赤革連盟』
ご期待ください!
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