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Episode1 お嬢様はかく語りき
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― とうとう・・・来たのね。
見上げると大きくそびえ立つ重厚な門。
その横には《私立鷺ノ宮学園》と書かれており、奥には歴史を感じさせる荘厳で豪奢な校舎が広い敷地内に何棟も並んで建っている。
私立鷺ノ宮学園(しりつさぎのみやがくえん)――――
ここは中等科・高等科・大学まであるエスカレーター式の学校で、生徒は弁護士・国会議員・有名タレントなどを親に持つVIPが多く在籍する。
今日からこの学園の高等部に編入する石野桃花(いしのももか)
彼女もまた学園のVIPの1人となる。
― それにしてもこの学園・・・
広すぎじゃない?
校門から校舎までどんだけ歩かせるのお~?
確かにこれだけ広かったら車通学してるのもうなずけるな~
まだ時間に余裕があるから学園内を見て回りたいところだが、桃花はあくまで見た目通りのお嬢様を装うため、脇目もふらず真っ直ぐ前を見て優雅に歩く。
腰まで伸びた桃花の長い髪は緩くウェーブされて、歩く度にフワフワと風になびいて・・・
茶色に近い髪色は朝の太陽を浴びてキラキラと明るく輝いていた。
母方の祖母がフランス人ということもあって桃花の髪と目と肌の色素は全体的に薄く、歩くフランス人形のような美少女・・・という形容詞が彼女にはお似合いだろう。
登校中の生徒達の中で一際目立っている桃花を、先ほどからチラチラと見ている生徒が何人もいる事など桃花には当たり前過ぎて、もう慣れっこになっていた。
うっかり目が合ったとしてもニッコリと笑顔で笑いかける。
桃花の営業スマイルと世渡り上手は、幼いころから家業を見てきて自然に身についたものだ。
桃花の家は京都に本社を置く創業80年の和菓子メーカー、《恭鳳堂》を経営している。
《恭鳳堂》は桃花の父の代から全国展開して成功し、今では有名デパートや一流ホテルとの取引もある。
最近東京に本社を移す事になり、跡取り息子でもある桃花の兄・晴臣(はるおみ)が先に東京に来ていたため、桃花も晴臣が通う鷺ノ宮学園に転入する事になったのだった。
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