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― ああ・・・私、この曲好きなのよっ
誰が弾いてるのかしら?見てみたい・・・
「詳しいのね、石野さん」
桃花が落ち着かなくてそわそわしていると、彩は1組の教室の前で立ち止まった。
「前田さん?」
「彼女、いつもこの時間は弾いてるのよ。音楽室、西階段上がってすぐのとこだから行ってみる?」
「彼女?」
「3、4階は時間ないからまた明日案内するつもりだったんだけど・・・」
彩はそう言いながら西階段を上がると、一番近い音楽室のドアを指差して「ほら」と小さな声で桃花に手招きした。
練習の邪魔にならないように気づかれないようそうっとドアのガラスから中を伺うと、そこには・・・
「城戸さん・・・?」
桃花が見とれてしまう程の正統派美少女・・・同じクラスの城戸璃杏(きどりあん)がグランドピアノに向かって演奏していたのだ。
朝ホームルームで彼女と目が合った時から気になっていた桃花は、可憐な美少女の名前をこっそりクラスメイトの長野碧(ながのみどり)に教えてもらっていたのだ。
・・・っていうか城戸さんって『レイハ』に似てるよね。
『レイハ』というのは桃花が大好きなアニメ、『らくおん』に出てくる『望月レイハ』というふんわりした黒髪ロングの癒し系美少女だ。
桃花は『レイハ』の優しい性格と癒し系の話し方がお気に入りで、こんなお嬢様になりたいと思ってた。
だから璃杏を見た時、桃花の理想のお嬢様像そのものが現実に現れて驚きだった。
それにしても『レイハ』・・・っとと、城戸さんすごい集中力・・・
教室で見せたあの柔らかな微笑みとは全然違う。
あんなに何かに真剣になれるって・・・羨ましい。
・・・それに何もしなくても美少女の城戸さんが楽しそうにピアノを弾いてる姿はもっと綺麗・・・っ!
桃花が瞳をキラキラさせて璃杏を見ていると、彩に『行きましょ』と促されて、もっと聴いていたかったが音楽室を後にした。
「もうすぐ学生音楽コンクールの本選なの。邪魔しちゃ悪いから、ね?」
「えっ本選!?すごーいっ!上手なはずね」
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