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バス通学の生徒は正門とは逆の場所に着くため、正門までぐるっと回らないといけないのだ。
・・・しょうがないっ、今日はあそこから入ろう・・・っ
昨日出会った不良達のお陰で成宮という男子に教えてもらった近道。
こんな可愛い制服でここを通り抜けるのはお嬢様の行動と言えるものではないが・・・
不本意だが背に腹は代えられない。
桃花に考える余裕は無かった。
一刻も早くっ!
誰にも見つからないように学園に入らなくちゃ・・・っ!
もし見られてしまったら
桃花の東京での『おしとやかなお嬢様に変身!計画』が音を出して崩れてしまうだろう。
桃花はきょろきょろと見まわして周りに人がいないか確認してから学園の周囲を囲んでいる塀に足を掛けた。
高さは桃花の腰くらいだが、桃花にとってこの位は余裕で登ることができる。
ここは塀というより生垣を作るために低めにブロックが積まれているみたいで
外側から見ると白い金木犀の生垣がびっしりと並んでいて隙間はなさそうに見える。
しかし、ミントブッシュが植えられている部分が比較的柔らかく、植え込みの間隔が広い所があった。
塀に上がり素早くピンク色の花が所々咲いたミントブッシュをかき分けると
桃花は勢いよく跳んだ。
「うわっ?」
「きゃあっ!?」
なんでこんなとこに人がいるのよ~っ!?
桃花は容易に着地できただろうその場所に後ろ姿の男が立っていてパニックになる。
目の前にいきなり現れたその男を当然避ける暇はなく・・・
ぶつかると同時に目をぎゅっとつむった。
あれ・・・っ?
痛くない?
桃花は大きなクッションに落ちたかのように柔らかい感触に包まれていた。
ふわ・・・あったかくて気持ちいい・・・?
目を閉じたまま桃花が気持ちよさに浸っていると、桃花の背中に添えられた手に僅かに力が入ったのを感じた。
桃花はピクッとしておそるおそる目を開ける。
「痛てえ~・・・」
な・・・なんでここに成宮がっ!?
気づいた時には昨日ここで会った成宮が桃花の下敷きになっていた。
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