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「なんでアンタがここにっ?」
桃花は成宮の胸に手をついて顔を上げ、驚きのあまり大きな目を一層大きく見開いた。
「・・・それ俺が言うセリフ」
成宮は桃花を見上げると不機嫌そうに呟く。
「こんなとこにいるから着地失敗しちゃったじゃないのっ!」
「はあ?ちゃんと前見てないおまえが悪いんだろ・・・」
「おまえって何よっ?ちゃんと名前あるんだからっ」
「大体この抜け道は俺が使ってんの!・・・っていうかいつまで乗ってんの?」
成宮の言葉ではっと桃花は我に返った。
ぶつかる寸前に振り返った成宮が桃花を受け止めてくれたのだ。
「ご、ごめんっ!?重かった・・・?」
桃花は慌てて飛び起きてささっと成宮から離れた。
桃花が跳び下りた場所は芝生が植えられていて、桃花も成宮もそれ程汚れずに済んだ。
痛くないと思ったらこの人が受け止めてくれたのか。
ゆっくり成宮が身体を起こしている様子を桃花は芝生に座って眺めながら思う。
・・・リアルな『サガ』様って意外と細マッチョね。
受け止められて背中に回された成宮の腕や胸板の感触が今になってまざまざと思い出されて・・・
桃花は耳まで赤くなった。
「初対面の男に抱きつくなんていい趣味してるね・・・お嬢様?」
しまったっ・・・!
また私とんでもない失態を~~っ!?
「桃花」
「・・・は?」
いま・・・なんて?
私の聴き違い・・・かな?
動揺している桃花の耳には、はっきりと聞きとれた確信がなくて桃花は戸惑った表情をした。
「ピンクの花・・・ついてるけど」
成宮が桃花の耳の上部分の髪を指ですくうと
はらり、と小さな濃いピンク色の花が落ちた。
「名前と同じだな、桃色の花だろ?・・・あ、桃はもっと薄い色だっけ?」
成宮は立ち上がるとズボンに付いた芝生を払う。
「なんで・・・私の名前の漢字知ってるの?」
「・・・なんとなく?」
成宮の不敵な笑みが桃花の胸をざわつかせた。
まだ成宮に聞きたい事はあったが、予鈴の音が鳴ってはっと我に返った。
ああ~~っ!?
またっ?私のバカ~っ!!
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