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桃花が深窓の令嬢になる目標には・・・まだまだ遠いようだ。
†††
「おはよう」
なんとか本鈴前に教室に着いた桃花は息を調えながらニッコリと笑顔で教室に入った。
「桃花おはよう~!朝はいつもゆっくりなの?」
碧が屈託のない笑顔で話しかけてきた。
「それが道に不慣れでこんな時間になってしまったの」
もうちょっと早く着く予定だったのに・・・
結局走る羽目になっちゃったし。
昨日といい今日といい・・・ツイてないっ!
「そっかあ~こっちに来たばかりだもんね?」
桃花は碧と話しながら自分の席に向かう。
― ・・・ミントの・・・香り?
璃杏は桃花が後ろを通り過ぎた際に風に乗ってきたミントのようなすうっとした匂いを感じ、何か思案しているようだった。
「・・・・・」
ガラッ
本鈴が鳴ったと同時に担任の平山が教室の前の扉から入ってきて、碧も他の生徒達も慌ててそれぞれの席につく。
本鈴が鳴り終わる前に先程まで一緒だった成宮が後ろの扉から静かに入ってきた。
成宮っ!?同じクラスだったの?
その様子を見た桃花は驚きを隠せずにこちらへ歩いてくる成宮をまじまじと見つめた。
成宮は桃花の視線に気づきながらも余裕の笑みを桃花に向けた後、左の席に腰を下ろした。
この席の生徒が成宮だったなんて・・・
皆に避けられてるみたいだけどそんなにヘンな人なの?
晴臣兄様とは正反対のタイプだけどクールなイケメンだし
モテそうな顔よ?
「まさか同じクラスとはね・・・」
独り言のように成宮が呟いたのを桃花は聞き逃さなかった。
ビクッ
やばいっ・・・
昨日の事とかさっきの事とか他の人に知られたら・・・!?
「はじめまして、昨日転入した石野桃花です。貴方は?」
要らない事言われたらマズイわ。
桃花は初対面のフリを決め込んだ。
「・・・ああ、石野桃花さんね?俺は成宮渉(なるみやわたる)」
「成宮くん、よろしくね」
「『アンタ』でいいよ。なんか昨日と違うね・・・桃花?」
ガタッ
桃花は蒼くなって思わず立ち上がった。
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