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「平山先生・・・成宮くんが腕を怪我しているみたいなので保健室に連れて行きます」
「え・・・っとじゃあ保健係の人は・・・」
平山は突然立ち上がった桃花に一瞬驚いたが指示を出そうと気を取り直す。
「大丈夫です。昨日保健室の場所は教えてもらいましたし、隣の席の私が責任もって手当てしてきますわ」
桃花はニッコリと微笑むと有無を言わさず渉の腕を引っ張り立ち上がらせる。
渉は『はあ?なんで俺が・・・』と何か言いたげだったが
無理やり教室から連れ出されてしまった。
「腕怪我してたのに腕掴んでたぞ?」
「怪我してんの反対じゃない?」
「成宮くんと行っちゃったけど大丈夫なの?私だったら絶対ヤダ~!」
「石野さんって優し~いっ」
生徒達がザワザワと話し始めると、平山は『静かに~!』と皆を一喝する。
そしてお喋りが止んで静けさを取り戻した1組のホームルームの続きを再開した。
彩は自分の席の左の2つの空いた席をちらりと見たが
興味のない表情で前に向き直す。
「・・・フフッ」
彩の隣から聴こえた可愛くて柔らかい声。
「・・・?璃杏?」
璃杏がクスクスと哂う姿に何がおかしいのか分からず彩は声を掛けた。
「やっぱり面白いわ・・・あの人」
「石野さんの事?『面白い』ってまさか璃杏・・・」
「彩・・・お願いがあるの」
璃杏の言葉に彩は嫌な予感が的中したと感じた。
璃杏のお願い・・・
面倒な事でなければいいけど。
天使のように優しい璃杏の瞳が何かを企んでいるかのように瞳の奥できらりと光っていた。
††††††††††††
3
「・・・なあ、どこまで連れて行く気だ?」
「・・・・」
渉の問いかけを無視したまま桃花は保健室を通り過ぎると1階の体育館へ続く通路の所で足を止めた。
「桃花?」
「・・・っだ・か・ら?その呼び方止めてよ!?馴れ馴れしいのよ成宮くん?」
「なんで?呼び易いしいいじゃん」
「初対面なの!いつ私が呼んでいいって言った?」
「許可いるの?それ?」
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