Episode1 お嬢様はかく語りき 

4/39
前へ
/39ページ
次へ
 鷺ノ宮の男子生徒は『成宮』という名前らしい。  成宮は桃花の後ろに立つ男子を無言で睨みつけていた。  「なっ・・・?」  この私立鷺ノ宮学園でそんな事があれば・・・私は京都に送り返されるか高校卒業を待たずに・・・  その先は桃花がずっと考えたくなかった事だ。    冗談じゃない・・・それだけは絶対イヤっ!  そう思うのと同時に桃花は幅も高さもあるブーツの踵で思いっきり男の靴を踏みつけた。    「痛ってええ~っ!?」  見た目がお嬢様だからって甘く見ないでよ・・・?  一通りの武道の心得があるんだからっ  成宮と他校の男子2人は驚いた様子だったが、他校の男子2人が加勢しようと桃花の方へ駆け出した途端、成宮にあっという間に腹部を殴られてノックアウトされた。  「すごい・・・っ」  あの人強いっ!?  桃花は足を抑えて痛がっていた男子生徒が「こいつ!」と叫びながら再び桃花に飛びかかってきたのをひょいっとかわし、男子の左腕をぐいっと掴むと一本背負いした。  男は宙にキレイに弧を描くように投げ飛ばされた。    ドサッ  他校男子2人は成宮に殴られた痛みでうめき声をあげながら、投げ飛ばされた男子を見て蒼白になる。  「こら~そこっ!何やってる!?」  少し高めなハイトーンボイスがどこからか聴こえて、他校生徒達は「マズイ」という表情で顔を見合わせた。  「やべえっ捕まるっ?」  桃花が投げ飛ばした男と成宮が倒した男、計3人の他校生徒は慌てて立ち上がると足早に退散していった。  逃げちゃった・・・  あの人達ってこの人の敵?みたいな感じ?   ・・・え~っと・・・どうしよう?   成宮って人に何か言った方がいいよね?  だけど私は《恭鳳堂》の娘。  京都では比較的自由にさせてもらってたけど  私の前からの希望、鷺ノ宮学園に入る事を条件に、私は家のために《恭鳳堂》に相応しい娘になるとお父様に約束した。    だから毅然とした態度でお嬢様らしくこの学園では過ごさなくちゃいけないの。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加