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シベリアンハスキーは、親が義理のある人から押し付けられて、家族となったのである。招かれざる客であった。
しかも、親は狡猾であった。私が犬を欲しがっていて、それまでは、断り続けていたのに、突如、私の誕生祝いとして、連れて来られた。
で、責任持って飼わねばならぬと、私に訓示し、自分は一切の世話をスルーするという、狡さであった。
当時、小学一年生であった私は、三世代同居の家に住んでおり、祖父、祖母は、農業をしていた。
祖父祖母は、牛や豚ならともかく、犬なんて、腹の足しにならんと、犬を嫌った。父母は、犬なんて手がかかるだけだと、嫌わないまでも、避けた。
かくして、銀と名付けられたシベリアンハスキーの子犬は、家族にはなれず、ただ私の子分として、私の家に入った。
子供にせがまれて犬を飼い始め、最初は責任持って世話すると断言した子供が飽きて養育を放棄し、以降の責任は、親にかぶってくる悲劇は、よく耳にするが、それは、なまじ親が中途半端に優しいからである。
私の親のように、犬なんて、死ぬなら死んでもいい、埋める場所はいくらでもあるという態度に出ると、子供は、犬の味方は自分しかないと、頑張れるものである。
銀は、犬小屋さえ与えられなかった。牛小屋の片隅に居候させられた。
食事は、人間の残飯であった。
そして、銀は、つながれていなかった。
まだ生後2ヶ月の子犬で、田舎ゆえ、法律もうるさくなかった。
銀は、牛舎の居候であった。
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