初めてのペットは、シベリアンハスキー

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銀の名の由来を書くのを忘れていた。 ハスキー犬の目は、暗闇で見ると、銀色に輝いている。 ゆえに銀である。 銀亡き後、二代目は、ゴールデンリトリバーだから、これを金と名付けようとしたら、リトリバーには、前の飼い主がつけた名があった。そして、金と呼んでみたが、それが自分の名だと認識するには、この犬は、年を取り過ぎていた。レバと呼んでやらないと、反応しなかった。仕方なく、名はレバのままになった。 銀は、牛乳が好きな子だった。おかげで私は搾乳がうまくなった。犬一食分の乳なんて、搾乳器なら数秒で絞れてしまう。そのために搾乳器をセットすると、かえって非効率なので、手で絞った。だが、犬一食分の乳絞りは、趣味の領域で、私は、搾乳器がなければ、酪農家としての乳絞りはできないだろう。私の指は、1リットルの搾乳にすら耐えられないだろう。 時代下って、娘が出来、この娘は、稀代の大食らいなため、私は牛乳の購入をあきらめ、乳牛の委託肥育に切り替えた。 委託肥育とは、子牛一頭を購入し、養育費一切を牛の所有者が負担し、取れた乳は全部自分の物となるのである。 趣味の世界で、牛乳は安くならない。かえって高くつく。魚を魚屋で買わず、自分で釣ろうとすれば、かえって高くつくように。 自然食ブームというか、グルメブームに便乗した新たな酪農家の商売である。 いくら娘が大食らいだからって、牛一頭抱えてしまえば、牛乳は余る。近所の自称グルメたちを、たぶらかし、委託費(牛の養育費)は、割り勘にして、乳も分け合う方式を採用した。最初の子牛の購入費と、搾乳期を迎えるまでの養育費は、私が負担したのだから、随分気前のいい話だが、子牛の購入から割り勘にすると、近所の似非グルメたちは、どん引きする。 子牛の購入費を負担させていないのだから、所有権は私にあり、当然生まれた子牛の所有権は渡さない。牛の名はひかり、実は娘の名も日香里(ひかり)である。 乳牛って、のべつまくなしに、乳を垂らすわけではない。妊娠出産させて初めて搾乳が可能になる。牧場の乳牛は、妊娠させられまくっている。ところが、種牛の種にも、金が要るのである。酪農って、楽じゃないと知れる。 私は、酪農家としては失格である。酪農家は、役に立たなくなった牛を殺処分しなければ、廃牛に無駄飯食わしてるようでは、失格である。
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