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夏休みとは言え、剣道部の朝練は毎日の日課。
僕は勉強はイマイチだが、剣道には自信がある。
「卯月、お手柔らかにね。」
同級生は僕と対峙すると、いつも逃げ腰になる。
防具を着けているし、怪我をさせる気もさらさらないのに、向かってくる気配もない。
つばぜり合いをした後、引きごてで一本。
後は適当に打たせてから踏み込んでの、胴打ち。
相手にならないのだ。
部の奴等の癖など、とっくにお見通しだし、はっきり言ってツマラナイ。
「卯月、お疲れ。」
面を外していると、女子部の主将が隣に正座した。
「…今日これから暇?」
「何か用?」
「無愛想だね。…部のみんなで勉強会するの。卯月も来ない?」
剣道部は成績優秀者が多い。…僕には場違いだ。
「やめとくよ。」
防具を片付けて、袴を脱いだ。
「着替えるんだけど。」
「えっ…ああ、ごめん!」
彼女はそそくさと道場を出て行った。
基本的に女子には更衣室があるが、男子にはない。
僕はスポーツ飲料のボトルをグビリと飲むと、外へ出た。
早瀬さんが車で待機しているからだ。
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