1、青磁の香炉

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『あら、意外と土っぽい物を作るのねぇ』 ……静かにしてはくれないようです。 どこから出てきたのか、ゆうらゆうら風を起こす扇子には、露草と水流が描かれています。 なかなか趣味の良い物ですね。 『そんな綺麗な顔をしてるのにねぇ』 「私は基本的には炭化や焼きしめを好みますから。可愛らしい物がお好みなら、十夢の方へどうぞ」 『あの子より、貴方のがタイプなのよ?』 ……会話にならないので、取り合えず釉薬を掛けてしまいましょう。 今さっき土っぽいと言われた花瓶ではなく、ろくろで引いた椀に、蓋付の桶から柄杓で汲んだ釉薬をとろりと掛けていく。 先に内側に掛けて、乾かすためにそっと手板に乗せた。 内側に垂れていく流れが、焼き上がってどんな顔になるのかは分かりません。 だから、窯を開ける瞬間は何度やっても期待と不安に胸が高鳴るんです。
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