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それは、しとしと雨の降る静かな夕暮れの事でした。
いつも賑やかな従兄弟が居ないおかげで、私は師匠と二人言葉少なに食事を終えて、茶碗を洗うことに専念していました。
と、言うのも、雨の夜には何故かお呼びでない訪問者が多かったからです。
その『声』を聞かないでやり過ごすには、何かに没頭していた方が良い。
まぁ、食器を洗う程度の事は上の空でも出来るので、大した妨げにもならなかったようですが。
「たっだいま~!」
「遅い」
「煩い」
古い日本家屋の入り口にはそぐわない、洋風の大男がずぶ濡れで、これまた似合わないしょげた顔をしています。
ぽいっと、申し訳程度に手拭いを投げてやりながら、ため息を付いて従兄弟を見上げました。
「十夢、どうしてまた厄介な物を持って帰ってくるんですか?」
「これも厄介かぁ?なんかさ、はんなりとしてて綺麗なんだぜぇ」
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