4、暗闇の訪問者

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『夏が来るわね』 「そうですね」 『夏祭り楽しみにしておくわ』 「はっ?」 うふふっと笑ってふわりと消えた露姉さんのいた場所には、前よりも増した艶だけが残っているようでした。 「言い逃げですか……」 私が夏祭りなんてものが大嫌いなのを知っていて、そう言うことを言うんですね。 嫌がる私の顔をみるのが楽しいんだと、趣味の悪いことを言っていましたっけ。 私を必要としてくれる人が存在するのかどうか、今も半信半疑です。 それでも、私の居場所はここなのだと、それだけははっきりと刻むことの出来た初夏でした。 私のなかには闇がある。 けれど、それに呼ばれずに、胸のうちに抱えて共に生きていくことも、出来るのではないでしょうか。
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