1、青磁の香炉

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『フフッ、本当にここは居心地がいいこと』 色っぽく微笑むと、まったく羨ましくなる程見えないらしい、びしょ濡れのまま上がり框に座る十夢の鼻に触れるだけの口付けを落とした。 『ご苦労様、連れてきて下さってありがとう』 「あれ~?なんか虫でもいたかぁ?」 鼻をごしごし擦って首を傾げると、一連の流れを呆れて見ていた師匠に、小言を言われつつ風呂場に向かいました。 『まぁ!虫呼ばわりなんて酷いわぁ』 微笑みを浮かべながら怒る女性は、かなり怖いものがありますね。 さて、見なかった事には出来ないだろうか? そうっと目を反らそうとした瞬間、ふわりと近寄ってきて私の頬に手を添えた。 ひんやりとした、不思議と嫌な感じのしない手だとぼんやりと思いました。 生きていない人の手には、違いなかったけれど。 『よろしくね』 しゃなりと首を傾げて見せると、艶っぽく微笑んで見せました。 どこか、商売の香りを感じたのは、その微笑みからだったでしょうか。 あまりよろしくしたくないのだと、眉間にシワを寄せて見せたが、どうやら彼女には利かないようです。
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