1、青磁の香炉

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「で、美人かぁ?」 「間違いなく貴方好みですよ」 風呂上がりの濡れた髪を拭きながら、濃い目の整った顔立ちを、ニヤニヤと崩している。 見るに堪えない、見苦しい。 さて、だらしない表情をしている十夢は無視して、折角だから姿も見ておきましょうか。 もちろん、宿り先の事ですよ? 豊満な体の事ではありません。 上がり框から畳の居間に上がると、さっきまで食事をしていた丸いちゃぶ台に包みを置きました。 それにしても、焼き物を風呂敷で包むだけで持って帰ってくる無頓着さは、如何なものかと思いますよ。 「……青磁の香炉ですか」 「いつの物かはっきりしねぇんだけどな。いいもんだろぉ?」 「そうですね」 この人は、憑いたんですかね。 香炉の精しては、人間味が有りすぎる気がするんですよね。 まぁ、人間くさい香炉の精かも知れませんけど。 「それで、おいくらだったんですか?」 「これかぁ?二千円だ」
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