第1章 あたりまえなことに ありがとう

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第1章 あたりまえなことに ありがとう

「あたりまえなことにありがとう…。」 8年前から彼女はずっとそう思っている。 「あたりまえなこと」は「あたりまえ」ではなかったのだ。 運命はここで変わったのかも知れない…。 小学校の夏。 彼女はいつものように外で遊んでいた。 楽しいはずの夏休み。 だがそれは一瞬にして泡となって消えた…。 ……車に跳ねられてしまったのだ。 奇跡的に一命はとりとめた。 しかし、 1 肢体不自由(体幹) 2 肢体不自由(上肢) の後遺症が残った…。 …彼女は気が付くと病院のベッドの上にいた。 その間に沢山の友だちや親戚がお見舞いに来て彼女への応援のメッセージを書いてくれていた。 目覚めたあとも沢山の人がお見舞いに来てくれた。  嬉しかった…でもベッドの上にいて話すこともできないでいる自分がいた。 立てて話せて日常的なことが出来ているみんなが羨ましくてたまらなかった。 あの日まで出来ていた事がことができない自分にどう対応していけばいいか…。 わからなかった。 あの日までみんなと出来ていた 笑えた、しゃべれた、立てた、走れた。 悲しく、自分に腹が立ったこともあった。 絶望した。 彼女はかけがえのない日々が削られた気分にもなったと言う。 「あたりまえに出来ていた事ができない…。 あたりまえにできるっていいね…。」 彼女はあたりまえに出来ていた事ができないでいる自分が嫌で嫌でたまらなかった。 彼女は来てくれたみんなに励まされた。 「お見舞いにきてくれたみんながいつも私の心を笑顔にさせてくれた。だから今度は私がみんなを笑顔にさせたいんだ。」 と彼女は前向きに考えていた。
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