【1】あたらしい家族

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「やってみなさいな」 「お義母様」 「ここは、いずれあなたに明け渡す所になのだから、若いけれど、早すぎることもないでしょう」 私、この人を嫌いになれない。 加奈江は思う。 義父が何故外に女の人を囲い、そちらを重く大切にするのか。 人の感情がなせることだから良いも悪いも言えるわけがない。 夫が義母を遠ざけるのもよくわからない。 男の人は――本当にわからない。 加奈江が寄せる政への愛情は、薄まるわけでもないけれど、全部を飲み込むように受け入れ、認める時間は過ぎたのか、と彼女は思う。 溝ができたからではない、遠慮なく、何でも言い合いぶつかり合う関係のとば口に私たちは立った。 でも、きっと。 私は政に全てを受け止められて、許されて甘えてしまうのだろうな。 彼は私を愛してくれる。 私の弱点も憎しみも全て。 「愛している」とはっきりと口にしてくれたことは一度もないけれど。 やさしい感情で包み込まれる安心感があるから、私は彼から離れられない。 このやさしさを―― お義母様にも向けてほしいの。 少しでも。 だって。 あなたのお母さんでしょう? コンロにかけた両手鍋から湯気が立つ。 今日は姑が夕ご飯を作る日。彼女が作る総菜は、政が好きなものだった。
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